ジャパンケーブルキャスト株式会社

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CASE STUDY 導入事例

データ放送活用事例 伊那ケーブルテレビジョン株式会社様

テレビを活用することで地域課題を解決し、
地域から必要とされ、頼られ、期待される会社へ

課題
買い物弱者をはじめとする地域住民の生活のサポートが必要とされていた
テレビを使い、地域住民のライフサポートを支援できるサービスを検討していた
高齢者を含むすべての地域住民が、今後も伊那市に住み続けるために、地域課題を解決するためのサービス検討が必要だった
導入効果
地域住民の生活の質を向上するための、多数のサービス実現につながった
テレビを通して、地域住民との距離が縮まった
10年、20年後に伊那市で暮らし続けるための準備につながった
全国のケーブルテレビ局や自治体との地域課題に対する意見交換が盛んになった

導入背景・課題

JCCのHybridcast提案が きっかけとなり、テレビを使った 買い物支援を検討

(左から)伊藤 氏 平山氏
(左から) 伊藤 氏 平山 氏

伊那ケーブルテレビジョン株式会社(以下同社)は、長野県南部の伊那市・箕輪町・南箕輪村の3市町村で、ケーブルテレビ事業をメインに、インターネットや固定電話、MVNO、電気といったサービスを多角的に展開している会社である。同社は『地域から必要とされ、頼られ、期待されるケーブルテレビ局を目指します』という経営方針を掲げており、今回取材した『ICTライフサポート・チャンネル(以下、本サービス)』導入をはじめ、地域に根差した先進的な取り組みを行っている。
今回の取り組みについて、常務取締役 伊藤 秀男氏は「今回の『ICTライフサポート・チャンネル』導入は、経営方針にまさに合致した取り組みだと思う。今後も期待されて、頼られて、痒いところに手の届くケーブルテレビ局でありたい」と語っている。

2018年から本サービスの実証実験を開始し、2020年に本運用開始を迎えている同社だが、実証実験当時、伊那市の買い物弱者に対して課題を感じていたそうだ。当時について、放送部放送部長 平山 直子 氏は「業務の中で買い物弱者がテーマの番組を作った際、玄関に出ていくことも難しく、サポートするボランティアの方も高齢になっているという伊那市の状況を見た。また、伊那市の社会福祉協議会で行ったアンケートでは、高齢者の4人に1人は買い物に行くのに困っているという深刻なデータが出ており、この深刻な状況について、検討するなら今だと感じていた」と語った。

また、同社は2018年、ジャパンケーブルキャスト(以下JCC)が提供するコミュニティチャンネル向けデータ放送サービス『JC-data』を導入しており、その際、JCCから「Hybridcast対応テレビを使うことで、双方向でのサービスが可能になる」という説明を受けた。 この説明から平山氏は「地元住民の買い物をすることが困難な方へテレビを使って支援ができるのではないか」というアイディアを思いつき、社会福祉協議会へ相談したそうだ。

伊那市の公募へ 参画したことにより、 本サービスの検討が開始

一方、同時期に長野県伊那市(以下、伊那市)では、ICT技術を活用し、地域課題を解決する取り組みの公募を開始していた。社会福祉協議会への相談がきっかけとなり、その取り組みの1つであるドローン物流事業参画へお声がけがあり、参画することが決まったという。「伊那市の公募に対し、ドローン物流事業で「テレビで買い物」を提案してみないか、ということでKDDI株式会社(以下KDDI)からお誘いを受けた。買い物弱者をサポートしようという動きが伊那市に出ていた中で、これはチャンスだと思い、参画しようと思った」と平山氏はつづけた。 また、この「テレビで買い物」がきっかけとなり、テレビを入り口として、高齢者や障がい者を含むすべての地域住民のライフサポートを支援できる『ICTライフサポート・チャンネル』としての検討が始まったようだ。


導入の流れ

関係者全員で Hybridcastについての 理解を深めながら 導入を開始

本サービスが採択された後、同社はJCCへ、Hybridcastを利用した買い物支援についての相談を行ったことで、JCCがシステム開発全般を担うこととなった。「開発をしてくださるかわからない状態でJCCに相談をしたが、引き受けていただいた。伊那市に色々な提案を直接してくださったり、Hybridcastについてあまり知られていなかったことから、伊那市、KDDIを含め勉強会でHybridcastについて丁寧に教えていただいたりした」と平山氏はいう。


利用者の声をもとに 改善を重ね、 2年間の実証実験を経て 本運用を開始

当初、同社は、ケーブルテレビのコミュニティチャンネルを入り口とし、買い物をはじめ、タクシー予約、高齢者見守りサービス、医療サービスの4つのサービスを提供することを想定していたそうだ。2018年から2年間の実証実験期間を経て、利用者に使っていただきながら改善を重ね、2020年4月、買い物は『ゆうあいマーケット』、タクシー予約は『ぐるっとタクシー』、高齢者見守りサービスは『見守りサービス』として本運用開始を迎えた。その後、ドローン構築を行い、2020年8月にドローンでの配送サービスが開始されたという。

利用者が無意識に 使いこなせるよう、 使いやすさを考慮した システム構築を実施

『ゆうあいマーケット』画面イメージ
『ゆうあいマーケット』画面イメージ

現在は、当初想定していた医療サービスを除く、3つのサービスの運用を行っている。実際の導入時について、平山氏は「高齢者がメインで使うものになるので、Hybridcastというインターネット最先端技術に、利用者は自覚がなく使いこなすことを理想とした。ただ実際はインターネットを利用していない方も多く、まずはインターネットを繋ぐところからになり、苦労した」と語った。開発時は利用者の使いやすさを考慮し、リモコン1つで操作が可能なUI画面の設計や、ケーブルテレビ利用料と併せて一括決済ができる運用システムの構築を行ったという。JCCに対し平山氏は「画面の見え方など、開発にあたり結構無理を言ったが、その時にできる一番いいもの作ってくれた。消費税の計算など、いろいろ気付いて、先回りして対応してくださったので、安心してお任せした」といった。


導入効果

利用者に合わせた 柔軟な対応により、 地域住民の 生活の質が向上

(左から)細井 氏・佐々木 氏・平山 氏
(左から) 細井 氏 佐々木 氏 平山 氏

現在『ゆうあいマーケット』は、ドローンでの配送が可能な地域である、長谷・富県・高遠町地区全域、『ぐるっとタクシー』は市街地を除く伊那市全域を対象エリアとし、サービスを提供している。運用は営業部 地域ソリューション課長 細井 道浩氏と、同課の佐々木 佑季氏の2名体制で行っているという。また、現在『ゆうあいマーケット』は、伊那市のスーパーマーケット「ニシザワ」にご協力いただき、「ニシザワ」の商品の他、近隣の薬局、生花店からの注文が可能となっている。導入当初、『ゆうあいマーケット』の注文はテレビからのみとしていたが、利用者を考慮し、現在は電話注文も受け付けているそうだ。『ゆうあいマーケット』利用状況について、細井氏は「テレビからの注文は、月20件から25件、電話からも対応しているので、合わせると40件ほどの注文をいただいている。当初はテレビからの注文のみでスタートしたが、実際に困っている人がサービスを受けられないということで、電話からの注文も受け付けることにした」という。

一方、『ぐるっとタクシー』と『見守りサービス』については、需要はあるが、現状『ゆうあいマーケット』ほどの定着には至っていないようだ。「実際サービスが始まってからわかったことだが、タクシーは出先から予約したいという利用者が多く、『ゆうあいマーケット』のように、テレビから予約していただくことのハードルが高いのが現状。また見守りについても、近所に家族が住んでいて、テレビでメッセージをやりとりするよりは見に行ったほうが早い等の理由から、登録はあるが利用数は少ない。今後利用者を増やしていくために、改修等を検討していきたい」と細井氏は語る。

住民に寄り添いながら 地道に対応したことで、 利用者や 喜びの声が増加

カタログ・チラシ
(左)カタログ (右)チラシ

導入当初は、住民説明会を開催し、『ゆうあいマーケット』の説明やテレビからの注文・利用方法などの説明会を行うと同時に、説明会に来られない方向けには、個別に1軒ずつ訪問しサービスの説明を行うことで、利用者を増やしていったそうだ。現在は定期的な活動として、電話用注文カタログや、季節物の商品を掲載したチラシの配布を行っているようだ。日々のお客様対応で意識していることについて、細井氏は「『ゆうあいマーケット』は置配はせず、基本的には対面で商品をお渡ししている。また、利用者に顔を覚えてもらい、安心して買ってもらえるよう、操作方法等、何か困ったことがあれば直接お伺いしている」という。

同社の地道な対応もあり、実際の利用者からは「テレビで買い物するのは楽しい」や「商品が届いてありがたい」などの喜びのご意見が多くあるそうだ。「実際に利用者のご自宅へ配送に伺った際、皆さんとても喜んでくださっていた。肌感覚で、価値があることを実現できたと感じた」と伊藤氏は続けた。

伊那市で 暮らし続けるために 必要なシステムを導入

ぐるっとタクシー
ぐるっとタクシー

伊那市は、東に南アルプス、西に中央アルプスを有しているという地形上、山に囲まれ、車以外での移動が難しく、今後の物流や交通、買い物などが地域課題となっている。今回の取り組みに対し、平山氏は「効果という面ではまだまだこれからというところがあるが、今後の人口減や物流を考えて「今」導入したことによって、10年20年後、この地域で暮らし続けることができるシステムの準備をすることにつながったと思う。伊那市が一歩先に進んで、全国のモデル地域になるような地域課題に取り組むことにより、波及効果として交流人口の増加につながればいい」とのべた。

全国からの 視察により、 地域課題に対する 意見交換が盛んに

同社の取り組みは全国的にも注目されており、全国のケーブルテレビ局や自治体から、視察依頼が増えたそうだ。細井氏は「月に1~2回視察の依頼がある。意見交換をすると共通の課題や解決策がわかるため、参考になることが多い。ここまで他の地域の方に注目されるということは、実際に運用に関わらないとわからないことだった」と語った。「他の地域でも同じような取り組みをしていただいて、実証結果を積んでいくことで、お互いにブラッシュアップしていけるようになればいい」と平山氏は続けた。


今後の展望

利用者にとって より使いやすい 環境を整備

ピッキングの様子
ピッキングの様子

同社は、2023年2月から『ゆうあいマーケット』の伊那市街地での実証実験として、高遠駅から伊那北駅までの往復バスを利用した、商品の配送サービスを行っている。将来的には、伊那市全域で買い物ができるよう、スーパーの拠点や店舗ごとのカテゴリ分け、商品数、在庫数、配達方法といった多くの課題に対し、試行錯誤を重ねながら検討を行っているとのこと。「今後利用者を増やすには、配達拠点や在庫数の確保等、利用者数に対応した運用の検討が必要。また、現在伊那市街地でお試し運用を行っているが、課題も多い。今後はどこに住んでいても商品が買えるよう、エリアを拡大していきたい」と細井氏はいった。

DXやICTを活用し、 利用者に喜んでもらえる 新たな取り組みを 行っていきたい

本取り組みの今後の展望について、伊藤氏は「今後は利用者の声を聴きながら工夫をし、利用者をもっと増やしていきたい。『ゆうあいマーケット』をはじめ、DXやICTを活用し、他にも利用者に喜んでいただけるような取り組みができればと思う」と述べた。

最後にJCCに期待することについて、細井氏は「これまでもご相談をした際、柔軟に対応して下さった。また、特定商取引法等こちらが知らない点もアドバイスしてくれた。今後も引き続き、改修についての相談や、こちらが考え付かないような提案をしていただけたらありがたい」と語った。


関連動画

「ゆうあいマーケット」説明動画 (伊那ケーブルテレビジョン様制作)


INTERVIEW
常務取締役 伊藤 秀男 様
放送部放送部長 平山 直子 様
営業部地域ソリューション課長 細井 道浩 様
PROFILE
伊那ケーブルテレビジョン株式会社
〒396-0026 長野県伊那市西町4983-1 NCCビル

※2023年2月時点の情報です。